VEGFとHGFの立体構造を用いたvirtual screeningによる機能阻害化合物の同定
鶴田 康一朗
概要
 腫瘍の増殖・転移は腫瘍が宿主に対して自身の周辺に血管新生を促し、その新規の血管によって宿主の様々な部位へ移動することによって起こる。この腫瘍の血管新生に関与しているタンパク質が血管内皮細胞増殖因子 (VEGF) と肝細胞増殖因子 (HGF) である。現在までにVEGFとHGFを標的とした阻害化学物質は未だに見つかっていない。VEGFとHGFの機能を阻害する化学物質が同定されれば、腫瘍の増殖・転移を抑制する新規の治療薬の研究につながる可能性が期待される。本研究ではVEGFとHGFの立体構造を用いたgrid dockingと遺伝学的アルゴリズムによる2段階のドッキングシミュレーションとヒト臍帯静脈内皮細胞 (HUVEC) を用いた細胞培養実験によってVEGFの受容体結合部位とHGFのNK-1ドメインに結合する新規の機能を阻害する化学物質の同定を行うことを目的とした。


図1. HGF の NK-1 ドメインの立体構造及び分子表面


図2. VEGF の立体構造及び分子表面